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「試作の詩作」
作品制作のための「詩」のようなもの 思いつくままに
2016年のテーマは「地平・地」「磨りガラス・曇りガラス」




「睫毛の端に南十字星」




睫毛の端に星の光をのせながら

波のまにまにワルツを踊る





「南太平洋の大三角で冬の大三角」




南半球 太平洋のど真ん中
オリオン座は見慣れた形とは逆に見える
その先にはシリウス
そして 南十字星
毎夜 宝石箱の中で眠りに入り込む






「満月の夜のクリスマスプレゼント」




全てが闇に溶けてしまった時間の中で
瞳をこらす
視線は曇りガラスの向こうへと浮遊する
急に雲が流れ 月が輝きだした

時おり月が大きく迫ってくる
光を増した その時
月の女神が微笑んだ





「プルシャンブルーのインク壺」




かつて、印象派の画家たちも
北斎も愛していた鮮やかなブルー

プルシャンブルーに魅せられ
小さい船が一隻 日付変更線を越え
南太平洋の大三角をひたすら進む
地球はとてつもなく広い







「ノアノア タヒチ」




ゴーギャンの歩いた道
ティアレ タヒチの甘い香りが
潮風に溶けて鼻腔をくすぐる
とりどりの花が咲きみだれ
ティキティキ 鳥の声
キラキラの太陽
ウルトラマリンの海の色

ゴーギャンは今もどこかで
絵筆を持っているかもしれない





「地球をめぐる」




朝には プルシャンブルーの海を眺め
陽射しの中流れる雲を追いかけて
夜には満天の星に包まれワルツを踊る

地球が抱える宝ものを
みつけに大海原をを巡る






「アフトンガリキのモアイ」




そこは果てしなく広がる海に浮かぶ地
アフ トンガリキ
青い地球が抱える宝もの

マナに魂が宿り
何を見つめていたのだろう

巡り来る日々の平和を祈る







「地球は輝く」




闇に佇む海と雲に覆われた空の境目に
薄明かりが見え隠れする

次第に水平線が現れてくる
雲が上がり始め 少しずつ
空が広がり太陽を描くキャンバスが出来始める

薄いグレーにほんのり朱みが差してきた
日の出が間近であることを教えてくれる
雲の裏側が白く輝き 縁取る
キャンバスを金朱に塗り替えていく





「点」




きょうも
あおい
ちきゅうの
なかの
いってんに
ぽつんと
うかんでいる





「夜明け前」




チリ バルパライソ
遅い夜明けを待ちながら
細長く連なる町並みは
丘の上まで光りを揺らしている
まるでオレンジ色のジェリービーンズが
朝陽を待ち焦がれ
歌い出しているかのように



「てのひらの思い」




雪解雫を掌に受けて
萌しへの思いは願うことから始まる





「北斎の愛したプルシャンブルー」




零れたインクがひろがって
海になる
空になる

プルシャンブルーの海の色
プルシャンブルーの空の色






「北斎の愛したベロ藍」




海は底から
うねる
跳ねる
し吹く

沖の浪裏
踊る波頭
漲る巨濤
そこに 突き抜ける青






「エミールガレ 硝子の中の愛」




アールヌーボー
ジャポニスム
硝子に愛を封じ込め

アールヌーボー
ジャポニスム
ガラスは
異国憧憬を映し
愛を謳う





「アイスクラックが時を繋いで」




アイスクラックが葉脈のように
過去から現在までを繋いでいる

ひび割れ模様は震える心
瞼を閉じれば
透ガレの硝子に触れ
心に触れることができるかもしれない







「にわか雨が雷雨に変わり…」



雲が俄かに広がり
雨の音が足早に近づいて来る

雨は真っすぐに
迷いなく
激しく
雷雨となってこの地を揺らす

空は次第に明るさを増して
また夏が輝き出す

束の間の出来事
それは
長い時の流れの中の地球の叫び






「曜変天目 瑠璃色の小宇宙」




満天星の如く光を放つ
濃き淡き瑠璃 掌中に抱え
青藍の小宇宙に永遠(とわ)を映す
思いは研ぎ澄まされて
遥かの聲を聴き
碗の中で浮游する




「言の葉ひとつぶ」




風に運ばれ

あなたの
聲を抱きしめて





「滲む光 はドロップス」




地平に散りばめられた
オレンジ色に明滅する
ドロップスのカケラが
溶け出した夜更け
一緒になって溶け出せば
その光に染まり
滲んだ涙も隠せるだろう




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